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『ヴァリス』読書会レポート

こんにちは、おもちΩです。雨が多くて不安定な日が続きますが、秋らしさを感じるようになりましたね〜。台風が接近しているようなので、皆様お気をつけくださいませ〜。

さて、今回の記事は8月30日(日)に開催したフィリップ・K・ディック『ヴァリス』読書会のレポートです。

この日は大須にあるtheater caféさんのカフェスペースをお借りし、メンバーは私を除いて熟練の読書家が揃いまして、6名という少数精鋭での会となりました。結果から言うと、それぞれの視点から『ヴァリス』を多角的に解釈することができ、2時間が一瞬に思えるような非常に愉しい会となりました。一人あたりの持ち時間が多く、一つずつの疑問やテーマについて心置きなく追求できるという、少人数ならではの長所を生かせたのではないかと思います。

さて、進行としてはまず簡単な自己紹介と『ヴァリス』の感想を一言ずつ話して頂きました。「小説としては破綻しているが、書物として興味をそそられる」、「打ちのめされている人などにとっては共感できるのではないか」、「時間の概念が自分の考え方と近くてとても面白かった」、「4人で映画を観るシーンまでは全く話が進まず、釈義は意味不明で読み進めるのが大変。映画を観てからは面白く読める」、「ロックスターが出てくるのが嬉しい」、「小説というより、観念を書き連ねただけではないのか」などなど、のっけから「小説『ヴァリス』」を疑問視する声が多くあがり、ディックの真髄を見た気がしました。笑

そこからは私がわざわざ下手な司会をせずとも、あれよあれよと話は盛り上がり、大きく分けて、1.ヴァリス(=シマウマ=ぼく)のシステム、2.メタフィクションとしての『ヴァリス』、3.作家ディックについて(同時代の作家と比較しながら)、という3つのポイントを追求していきました。というより、自然とそうなっていましたので、出た意見を箇条書きで下記にまとめます。

1.ヴァリス(=シマウマ=ぼく)のシステム
 ・非常にキリスト教的であるが、異端的解釈はディック独特のものである。
 ・「帝国は終わらない」>「帝国」というキーワードが持つ意味とは→『ヴァリス』における「帝国」とは大統領(が権力を持つ世界)である。
 ・帝国とは、民族に基づかない人工的かつ侵略的に作られた国であり、グノーシス主義の考えを踏まえると、「帝国」は狂った神(悪魔的存在)が創造した苦しみの世界として解釈できるのではないか。
 ・狂った神「ヴァリス」とは、過去・現在・未来に偏在する狂った自分自身である。
 ・ヴァリス=情報=三位一体の精霊=実体なきキリスト

2.メタフィクションとしての『ヴァリス』 
 ・メタフィクション的に読むとかなり面白い小説であるが、実在のものとそうでないものが縦横無尽に混在しているためにこの面白さが小説としての破綻を生む要因ともなっている。
 ・正気のフィルと狂気のファット
 ・序盤と終盤のファットとフィルの関係は異なっており、一度は統合された二人の人格はソフィアの死後再び分裂してしまうため、救済は無いと思われたが、実は前向きな生を感じられる清々しいラストとなっている。ファットとぼくの関係は次のステージに進んだのではないか。

 うぅ、私も浅知恵で臨んでいましたので、この辺りはうまくまとめられません。(>_<) 

3.作家ディックについて
  ※()内は読書会の話題ではなく、おもちΩの個人的な感想です。
 ・ディックの本領は、短編で発揮される。長編だとプロットが破綻してしまう。
  (実は、ディック自身もこの点について、自分は短編こそアイデアを十分に生かせるのであって、長編はそのアイデアにやたらと文章をくっつけただけだと話しています。意外と冷静に自分の作品のこと見ているのですね。)
 ・ディックとヴォネガット…二人のちがいは、健全さと不安定さ。経済的余裕が二人の傾向を分けた?
 ・ハバートとディック…独自の宗教観を持ち、世に出していることは共通している。しかし、新興宗教団体まで立ち上げた元SF作家ハバートに対し、ディックは自分自身の釈義が本当に正しいのかを常に不安に思い続けながら考察を重ねていた。正気と狂気の狭間を行き来してはいたが、ディックは本質的に「良いヤツ」だったのだろう。
 ・ディックとバラード…バラード作品は視点が常に一定で安心感があるのに対し、ディックの作品は至近距離の視点が多く、死角から突然何かが飛び込んでくる 怖さがある。三人称でも一人称的で、語り手さえも信用できないため、気づいたら主人公と一緒に泥舟に乗っていたという恐怖!英原文もやはりディックは不安定だそうです。(映像を例えてのお話、すーごく面白い考察でした)
 ・ディックとレム…レムは、思考実験を究極に追求できるのはSFだけであると述べていることから、ディックの視点の死角の未知さに共感を覚えたのではないだろうか?泰平ヨンシリーズは確かに似た趣があるように感じる。
 (レムが、ディックが『ユービック』を発表した際に本作をとても気に入り、後にディックに「あなたと私の作風はどこか似ていますね」といったような手紙を送っていることから、どこが似ていると思うか聞いてみました。それにしても、『アンドロイドは〜』の時はメタクソにディックをこき下ろしていたレムが、『ユービック』でがらりとディックへ親しみを抱いたレムは、単なる皮肉屋ではないんだなと勝手に嬉しくなったのでした。)
 ・ディックと宮沢賢治…(この二人も似ているねと話題があがったあたりで残念ながらお開きとなってしまいました。ふと思い出したのですが、以前宮沢賢治を研究してらっしゃる方が、「宮沢賢治は自分を心理学者だと名乗っていた」といったようなお話を伺いました。そういう点でも、ディックは小説家というよりかは思想家的な側面が非常に強く出ているように思うので、やはり似た雰囲気を纏っているように感じ、自分としては納得でした。)

 最後に、ディック作品でそれぞれお気に入りを挙げてもらいました。

☆Hさん…『ユービック』、『パーマー・エルドリッチ 三つの聖痕』、『火星のタイムスリップ』
☆Ngさん…『ユービック』、『高い城の男』、「地図にない町」
☆楠樹さん…『ユービック』、『高い城の男』
☆Wさん…『高い城の男』、短編集
☆Nsさん…『宇宙の眼』
☆おもちΩ…『ユービック』、「地図にない町」 

 大方かぶっているというのも面白いですね。生涯に44の長編と121の短編を、休む間もなく生活に追われながら書き続けたディックですので、作品の質の落差がすごいと言われています。このことを踏まえると、大方被っているというのも頷けるような…笑 それでも、どの作品であれ「読ませてしまえる」ところがディックのすごい所かなぁと思ったりもします。あともう一つだけ言いそびれていましたが、実は私ディックと誕生日が同じなんです!(^o^*)…本日最もどうでもいい情報を失礼しました…。

こんなまとめでは収まりきらないほどたくさんの考察や解釈が飛び交う、本当に充実した2時間でした。参加者の皆様、レポートをお読みくださった皆様、ありがとうございました。またこうした機会があれば、何卒お付き合い頂ければ幸いです。


『ヴァリス』読書会参加者の方によるブログです♪

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